IPOマーケットを取り巻く反社会勢力の罠 11 | IPOベンチャー今昔物語

IPOマーケットを取り巻く反社会勢力の罠 11

僕は浅はかにも島村社長の言葉を鵜呑みにしている間に時間は流れ、メディカルイクイップメント社は決算をむかえました。

決算が固まった頃を見計らって、島村社長にアポイントを取りました。

あまり時間がないと言うことで、決算書だけをもらってその日は帰りました。


会社に帰って決算書に目を通すと、未収金が増えているではないですか。

変だ、おかしいと思い隈なく決算を分析しました。
どうも数字がおかしい、BSもちゃんとバランスしているのだけれど、なんか変だ。


慌てて島村社長にアポイントをとって話を聞きに行きました。


「社長、何故未収金が増えているんですか?」

「大丈夫、大丈夫。ちょっと回収が遅れているだけだから。」

「本当のこと言って下さい!」
詰めること4時間。

応接室の電話の受話器を取り上げて、社長はぼそっとした声で言いました。
「柏原に応接に来るように言って。」

柏原取締役が帳簿らしきものをいくつか持って応接室に入って来ました。

「本当のことを説明して…。」

柏原取締役の手には二冊の手形帳が握られていました。


「えっ…。まさか・・・裏手形…。」


柏原取締役は静かに頷きました。

「なぜそんなことに?!幾ら振出しているんですか!」


「四億です。」

消え入りそうな声で島村社長が答えました。